交差するコミュニケーション
相補交流が行われていると…
みなさん、こんにちは。 さて、前回は「相補交流」についてお話をしました。二人のやりとりを矢印を使って図示したときに、この矢印が平行になっている状態を「相補交流」と呼びます
この相補交流が行われていると、二人のコミュニケーションは長続きする可能性があります。また、この相補交流が行われていると、メッ セージの送り手が“受け入れられている”という感じを持ちやすいと言われています。このようなことから、新たな関係を築く際にも築いた関係をより進展させ るためにも、コミュニケーションをはかる際には矢印を平行に保つことを心掛けたいものですね。
ところで、皆さんのまわりにはお説教が長い人はいませんか?上記の例ではありませんが、最初は書類の不備だったはずなのに、少し前のミスを持ち出し、プラ イベートなことに口を出し、挙句の果てには人間性まで言及してくる。学校の先生でもいるかと思います。最初は遅刻についての注意だったはずが、いつの間に か自宅での過ごし方にまで言が及んでくる。「あぁ、お気の毒に…」と遠目に見ていると、こっちにまで飛び火してくるので、周囲としても気が抜けません。
実はこれ、相補交流のネガティブな側面なのです。矢印が平行になっている状態だと良いやりとりだけでなく、「イヤなコミュニケーション」も長続きし てしまう可能性があるのです。長いお説教に限らず、イジメや極端な依存関係なんかもこの例にあてはまると思います。では、こういった長続きしてしまうイヤ なコ ミュニケーションにはどう対処したらいいのでしょうか。
ここで役に立つのが先週もう一つ紹介した「交差交流」です。「交差交流」とは、二人の間のやり取りを図示した際に、矢印がクロスしているコミュニケーションのことを言います。
このように矢印が交差すると、その話題は途切れてしまいます。もしコミュニケーションを続けるとなると、片方の人が自我状態をシフトさせる必要があります。しかし、その際にはこれまでの話題ではない、新しい話題が会話の中心となります。
例えば母親と子どもの会話で、母親の「100点は何人いたのかしら?」に対し、子どもが「15人だよ」と「A」から返答したとすれば矢印は平行になりま す。しかし、話題の中心は“100点をとった人の数”であり、“100点を褒めてほしい”という子どもの気持ちは話題の中心からいなくなってしまいまし た。この例はあまり望ましくない例ですが、これを上手に応用すれば、必要以上に長続きするイヤなコミュニケーションを途中で断ち切ることが可能となりま す。それについてはいつか私の講座で取り上げてみたいものですね。
以前コラムで「断り上手」というお話をしましたが、イヤなコミュニケーションを延々と続けるということは大きなストレスとなり、心の健康に良い影響を及ぼ しません。豊かな人間関係を築くためには、相補交流で関係を築き、交差交流を適度に使って対人距離を調整することが大切になってきます。
皆さんは人の話を聞くときに交差交流を多用していませんか?我慢してストレスフルなやり取りを続けていませんか?これを機に日常のコミュニケーションを振り返ってみてはいかがでしょうか。
それではまた。
執筆:松本敦 【講座:全5回で学べる‼交流分析講座】
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